都内では10日から公開された映画「第9地区」を観てきました。アカデミー賞4部門ノミネートと言うフレコミもありますが、個人的には21世紀の「スターシップ・トゥルーパーズ(原題 Starship Troopers)」的な名作と言う印象です。
「スターシップトゥルーパーズ」の名作ぶりが理解出来ない場合は単にシュールな映画とも言えますが、本作は21世紀らしくとてもシナリオも良い感じ。
第9地区 公式サイト(日本)
第9地区(米国)
ストーリーは公式サイトをご覧いただくか、知らないまま映画を観ても充分理解出来ます。
とにかくストーリーの展開として素晴しさは最初の数分から始まり、なぜ宇宙船がヨハネスブルグに来ちゃったのか?特に説明もせず、未知との遭遇となるはずが、一転して難民キャンプになると言う、文章だと強引に聞こえるお話の前提条件をあっという間に解説してくれます。
またこの映画自体の設定としてはドキュメンタリー風になっており、一般市民から主人公が勤務するMNU(Multi-National United)の職員達、家族達の語りが挟み込まれています。
MNUが何か?はこちらをご覧いただくと良いかと。
MNU | MULTI-NATIONAL UNITED
この辺のWebの作りは最近定着化しましたね。ブレアウィッチプロジェクトあたりから始まったのが最初で、近年ではクローバーフィールド HAKAISHA(CLOVERFIELD HAKAISHA)とか。
話の展開が大きく変わって行く頃にはすっかりと映画の世界にハマっているに違いないはず。
この映画はWikipediaによるとピーター・ジャクソンがニール・ブロムカンプ監督を他の作品に起用しようとしていたが頓挫したため、生まれたそうで、元々は短編映画だったようです。
しかも主役のヴィカスを演じたシャールト・コプリーは元々プロデューサーとして関わっていた、とか、台本はあるけど台詞がなくほとんどアドリブだった、宇宙人(通称 エビ)としてCG用のスーツを着て演技した等のエピソードを王様のブランチのインタビューで語ってました。
元が短編映画だから、このかなり強引な設定のまま長編CG映画になったわけか、とちょっと納得してしまったりします。
だって宇宙人のキャンプを移設するために人権保護の観点から退去の24時間前に通告し、サインをもらわなければいけない。そのためにMNUの職員が宇宙人の家に行ってサインしてもらう作業を行うわけです。しかもそのキャンプが超スラム化していて、闇市まであり、宇宙人の好物の猫缶を買うために自分たちの武器と交換していたりと、どこかの国の難民キャンプそのまんまな光景が至って自然に展開しております。おまけに街中は宇宙人と人間で隔離されているアパルトヘイト時代の南アの惨状を彷彿とさせ、この変な設定が普通に存在するかのごとく描かれている不自然さがとても面白いわけです。
娯楽映画としてエンディングまで非常にバランスが良く、上記のようなふざけた設定のくせに人類に置き換えてみたら考えさせられてしまうシナリオの奥深さから、本作はアカデミー賞のノミネートされたのだと思います。
お子様には目の毒な映像ですが、自分の価値観が全てではないと教育するにはとても良い映画だと思いました。
<2010/04/12追記>
シナリオについて補足するなら「アバター」と同じで、場所が地球ってことじゃないかな。
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