iPhoneに対する国内メーカー担当者の声の記事を読んで

iPhone

元ネタ:国内6メーカー担当者が実物を見て語った「iPhoneの衝撃と本音」

なかなか面白い記事だと思いました。
日経ITPro掲載記事 国内6メーカー担当者が実物を見て語った「iPhoneの衝撃と本音」

デバイスそのものの出来栄えに対する意見などは既にあちこちに現物を見た人の感想があるので大方その通りなのだろうと感じてます。
「テンキーを使わない電話」と言う発想の製品がほとんど出て来なかった点は、一言で言うならば固定概念だったのでしょうし、マーケティング的にも真っ当なアプローチだったのだと思います。過去にはテンキーではない製品も市場に存在したわけですが、CPUの処理スピードの問題やソフトの成熟度の問題でセールスでは失敗してました。ここで問題なのはセールスで失敗した製品は次に改善されたバージョンが作れないと言う製品開発の環境なのでしょう。

「iPhoneには、物作りに対する強い信念を感じる。タッチパッドや機能などを表面的に真似しても、iPhoneを超えるものはできない。開発者の信念がこの製品を作り上げたような気がする」(F社技術担当幹部)

そういう意味では過去にあれこれ革新的なアプローチをして製品を生み出してきたのに、この言葉を借りるなら「信念」が欠けていたと言う事なのでしょう。まあだからと言って別にアップルの開発者と同じ事をしたからと言って、iPhoneが日本企業に作れるとは思えないのですが、こういう風に開発者のパッションを感じる製品が世の中に溢れるようになって欲しいと感じる事は日々の事です。なぜiPhoneにはならないのか?と言う答えは例えばこういう部分です。

高級時計や貴金属を思わせる高級感のある箱を前にして、A社プロモーション担当は「アップルらしい」とため息をついた。国内ではほとんどのキャリアが、 コーポレートカラーを彩った共通デザインの段ボール箱を採用しているだけに、メーカーとしては、箱に対してすらうらやましいと感じるようだ(イー・モバイ ルだけはデザイン性の高い箱を採用)。

と言う感想が出るあたり、既に提供したいと思っている物が違うわけです。エクスペリエンスの提供がゴールかどうか?と言うと説明がめんどくさい話になってしまいそうなので、あえてこんな風に理解しようと思ってます。

ケータイ文化で一儲けしてきた日本企業側から見ればイノベーションのジレンマなのかも知れませんが、アップルの製品を見てきた人からすれば、別に当たり前のクオリティで望まれたタイミングで製品が出てきた感じでしょうし(まぁ時期的には遅い気もしなくもないか・・・)、WALKMANがどうやってもiPod+iTunesに勝てなかった理由でもあると思います。それは”おもてなし”と言うやわらかい言葉ではなく、そもそもの企業の立ち位置が違うということ。

TRANSCRIPT–Bill Gates and Steve Jobs at D5

Because an iPod’s really just software. It’s software in the iPod itself, it’s software on the PC or the Mac, and it’s software in the cloud for the store. And it’s in a beautiful box, but it’s software. If you look at what a Mac is, it’s OS X, right? It’s in a beautiful box, but it’s OS X. And if you look at what an iPhone will hopefully be, it’s software.

そういう観点で考えれば、このiPhoneと言う製品がハードウェアメーカーとしての観点ではなく、ソフトウェアメーカーとしての実力を十分に発揮できる製品でしょ。ハードウェアキーボードが無ければ埃が入って壊れる可能性も低くなってメンテナンスも楽で、対応はソフトウェアのアップデートだけで済むわけだし。

もうひとつ日本の企業にiPhoneが出来ないだろうなぁと思う理由はビジネスモデルでしょう。確か1月のMacWorldでは開発に2年半 掛かったという話があったけど、純粋にこのハードウェアを開発するだけに2年半も掛けたとは思えない。ふんだんに使ったであろう開発費用を回収するどころか、これまで通信キャリアが独りで溜め込んでいた携帯市場の利益もアップルに流させるようなエコシステムを開発したわけだから、あっぱれとしか言い様が無い。別にこれはジョブス1人の仕事じゃないでしょう(もちろん「すごいアイデアを考えついたんだ!」と言って社内に伝えたのはジョブスだろうけど)。相当キレ者の人々がブレインとして企画したに違いない。

ビジネスモデルに関してはとっくの昔に書いてる方がいらっしゃるので、解説はこちらで。
iPhoneのビジネスモデル

とかく製品の出来ばかりに目が行ってしまいますが、おいしいりんごは何度も味わえるということですね。でもま、これって日本の携帯メーカーのビジネスの改良版と言う感じかと・・・。

プロフィール
書いた人
野崎 秀吾

Content Syncretist(コンテンツシンクレティスト)
✨ コーヒーとクラフトビールの愛好家で、在宅勤務を楽しむジェネレーションアルファ世代の父。Bromptonでのサイクリングをこよなく愛する。

最近のプロジェクト:
AIを活用して、架空のファッション雑誌風写真集を出版。デジタルアートの新境地を探求。
1999年から続く私のウェブサイトは、私の長年のライフワークであり、成長と学びの旅の記録です。未熟なコンテンツもありますが、それもすべてが私の経験の一部。SNSで私を見かけたら、ぜひお声掛けください。AIとクリエイティビティ、音楽制作の裏側、あるいは日常のことなど、皆さんとの交流を楽しみにしています。

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