Kamikaze POP CEO ニコール氏へのインタビュー

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サンフランシスコ滞在時も書きましたが、ダウンタウンにあるMETREONと言うビルの中でたまたま発見したKamikazePOPと言うお店にふと興味を持ち、勢いでインタビューのお願いしたところ、直接CEOのNicole Demeo氏からお返事をちょうだいし、何とかお時間いただける事になりましたので、このビジネスを始めた背景等聞かせていただきました。ちょうどお返事のメールに、発売中のWiredでマンガが特集されている話が書いてありました。MANGA conquers America記事:Japan, Ink: Inside the Manga Industrial Complexもちろん雑誌の方も買ってしまったのですが、雑誌の中では実はそれほど大きい扱いではなかったりするものの(個人的にはキャノンボールの話の方も面白かった)、確かに日本の同人誌のコミックマーケット(コミケ)主催者へも取材をしていたりと情報はちゃんと捉えている様に思えます。当初は手短に話が終わるだろうと予想して、最初はそのまま載せようと思っていたのですが、ありがたい事にスタバのコーヒー片手に1時間くらいお話をしていただきました。インタビュー形式だとすんごく長くなってしまうのでまとめ形式で書かせていただきます。前半はKamikazePOPと言うネーミングを与えたこのビジネスについてを中心に書いて、後半はCEOのNicole氏についてまとめてみたいと思います。Kamikaze POP CEO ニコール氏

<写真はNicole Demeo 氏 KamikazePOPの前にて>

○Kamikaze POPについてニコールさんと漫画の出会いは元々、彼女の甥っ子が漫画が好きだった事から始まるようです。甥っ子が本屋の漫画コーナーに行っては10ドルも費やしていたのを見て、漫画の事は知ったとの事。なので、このビジネスをしていてとても楽しいのは子供が漫画を読んでくれる事。そして漫画をかいてみようとすること、なぜならアメリカの子供はまだそういう事をあまりしようとしていないからだそうです。僕が小さい頃は漫画を読んでいるとアホになると言われたものですが、時代は変わりました。東海岸にもビジネスパートナーがいらっしゃるそうで、彼女の娘も漫画が好きで、良く漫画を買っているそうです。子供達は本当にお昼代を削ってまでマンガを買おうとしていて、ネットではなくやはりお店に来て選んで買うとおっしゃってました(60ドル位費やすとか)。ニコールさんの分析では、日本のアニメは(シナリオが)とても複雑でそこがとても評価を受けてると考え、KamikazePOPと名付けてリサーチを始めたそうです。2005年頃の話です。僕の記憶では確かパリでアニメのフェスティバルが行われたのもその頃だった気がしますので、ジャパニメーションに対するレスポンスが海外から聞こえて来た頃かも知れません。ちょうど休みを使ってパリに旅行に行った年で、本屋には漫画が並び和風な雑貨もちらほら置かれている状況を見て、結構新鮮に感じた事を記憶してます。リアルなベルサイユ宮殿で読むベル薔薇って結構贅沢?と思ったり。話を戻します。この手のビジネスが他のビジネスと違っている顕著な点はお客さんが良い事だとおっしゃてました。なので是非、日本の投資家の人達にも興味を持って見てもらいたいとおっしゃってました。ニコールさんの言葉を借りると「とてもポテンシャルがある市場です。今はまだ店舗が少ないのですが、いくつもリテールストアを建てるポテンシャルがあると感じています」確かに今のところコンペティターは少ないのでチャンスは多い気がします。現在のビジネスはリテールに特化しているため、特に重要視しているのは如何に満足した購買体験を提供出来るか?と考え、マーチャンダイズにはかなり気を使っているとの事。例えば業者から送られるサンプルの梱包ひとつをとってもチェックして、ディストリビューターとしての評価をしているのでとてもハイクオリティーを維持しているとおっしゃってました。まぁ確かに梱包等そういうのはアメリカだといい加減なところもありますしね。日本国内の感覚で言うと、梱包とかはしっかりやるのが普通なので、そういう思想も受け取ってもらえているなら良いのではないか?と感じました。もちろん作品選びに関しても、オタクの心に響く作品のレーティングを行い、客観的にわかるようなシートを作成したりと熱心です(元々叔父や親に理解させるために作ったとか)。今後の展開についてはリテールストアだけなのか?と思いきや、もちろんオンラインのビジネスも考えてはいるそうです。とてもユニークなストラテジーなので今は言えないが、期待してほしいとの事。もう既にやっているのは「ガジリオネアクラブ(兆長者クラブ?)」と言うポイント制のメンバーシップクラブです。私もインタビュー後に入ってしまいましたが、これは商品を買う毎にポイントをあげて、いくらかポイントが溜まるとシャツをあげたりとノベルティがもらえる仕組み。申し込み用紙を切り取ると、残りの半券が会員カードになるのが特徴との事。日本だとこのあたりの会員カードビジネスは数年前からクレジットカードと一緒になっていたりするのでそれに比べると大人しい印象を持ちました。しかし今回の場合、対象が子供なのでこれで良いのかも知れません。

<写真は会員カード>

gazillionaire club card

USでは漫画は薄暗いところで売っているものらしく、そういうイメージを払拭するためにかなり気をつけてデザインしているとおっしゃってました。当日も”KamikazePOP”のシャツを来て全身でアピールしてました。デザインの出来映えは感性の世界なので置いといて、とてもポップな仕上がりになっていると思います。僕自身がこの店に目が行ってしまった理由もこのデザインにあって、どうしてこのビルのこのロケーションに、アニメの店を置いてるんだろう?かなり恣意的に置いてるに違いない、感じたわけです。そういう意味ではアテンションが重要視される現代において、最初の障壁はクリアしていると思います。

僕個人がとても気になっていたのはUSにおける漫画マーケットのポテンシャルでした。この点に関しては明確に数字をお答えいただけませんでしたが未知数と言う事のようです。特に女の子がマーケットリーダー的な位置づけになっているようで、ファッションを含め漫画の世界にどっぷり浸かっているそうです。女の子はファッションにお金を使うのでここは重要な点です。

基本的にリーチの方法はテレビしかなくて、テレビを観た子供が漫画やグッズを買いにくる。当然子供の小遣いだけではないので、その両親もターゲットになるとの事。新しい商品は常に探していて、実際に子供達にどういうのが欲しいのか?聞いたりしながらリコメンドもしているようです。冬休みに入る1月、2月はとてもお店が混むらしいので、ある意味今は仕込みシーズンなのかも知れません。

そういう商材の仕入れ先ですが、USで有名なパブリッシャーとしてはよく名前が挙るTOKYOPOP、Vizあたりから仕入れているそうで、事前に店内を拝見した際にもVizの漫画が大量に並んでおりました。売れ筋は「NARUTO」「BLEACH」そして、未だに「ポケモン」も大きい存在のようです。車好きにはおなじみの「頭文字D」があったのですが、これもVizでした。時間があれば出版系もインタビューしてみたかったなぁとふと思いました。

○CEO ニコールさんについてニコールさんは15歳の頃にスペインの学校に行き、アルゼンチンに行ったりあちこち旅をしたそうで、その頃から様々なカルチャーの存在に興味を持ったそうです。仕事のキャリアとしてはマーケティングコミュニケーションを専門にこれまで仕事をしてきており、スティーブジョブスがAppleを追いやられた後で立ち上げたNEXTにもいたとの事。その頃にはじめて日本にも来たそうです。

日本で来た事がある街は東京と幕張。東京には友達も住んでいる(NEXTですよね、まさか・・・?)。その友達にはあちこち連れて行ってもらったそうで、当然秋葉原等の聖地も巡礼済み。一日で何十件も連れ回され、とても楽しかったようです。

一番印象に残っているのはプラスティック寿司。
※えーっと、それは合羽橋だと思いますけど。

ニコールさんによると
「アメリカでは漫画は徐々にクールと評価され始めている。子供を、国を助けるのはとても大事だと思ってる。この店に来てくれる子供を見ていると本当にそう思う。かわいい子がとても興味深く商品を見て行ってくれる。他の国のカルチャーを紹介して行く事はとても大事だと思うの。」
そしてこのインタビューの中の言葉でとても印象的だったものが、
「私はクレージーかもしれない(w。でも私は挑戦し続けるの。だって”Kamikaze”ってそういう意味でしょ?」
まぁ、KamikazePOPだからそういう解釈もある、と言う事で。
ちなみにNicole氏の経歴はこちらにございます。もともと実業家の家と言う事なのでしょう。

インタビュー全体を通しての僕の感想ですが、漫画、オタクカルチャーが米国流のマーケティング手法で解釈してもらえばこういう形になると言う事です。ちっともクレージーではない。それどころか日本のポップカルチャーが持つポテンシャルを改めて強く感じました。これまで非常に興味をもって見て来た市場なので、生の声が聞けて良かったです。良い形でEco-systemが発展し、本当の「神風」にしていけたらと思ってます。

最後に、忙しい合間を縫ってお時間をいただいたニコールさん、ありがとうございました!

<12/13追記 関連記事:ラーメン屋とマックの戦い (ニュースを斬る):NBonline(日経ビジネス オンライン)>

プロフィール
書いた人
野崎 秀吾

Content Syncretist(コンテンツシンクレティスト)
✨ コーヒーとクラフトビールの愛好家で、在宅勤務を楽しむジェネレーションアルファ世代の父。Bromptonでのサイクリングをこよなく愛する。

最近のプロジェクト:
AIを活用して、架空のファッション雑誌風写真集を出版。デジタルアートの新境地を探求。
1999年から続く私のウェブサイトは、私の長年のライフワークであり、成長と学びの旅の記録です。未熟なコンテンツもありますが、それもすべてが私の経験の一部。SNSで私を見かけたら、ぜひお声掛けください。AIとクリエイティビティ、音楽制作の裏側、あるいは日常のことなど、皆さんとの交流を楽しみにしています。

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